Immunology - Adaptive Immune System
前回に続いて免疫系の動画、第2弾です。
テーマは、獲得免疫です。
T細胞(CD4, CD8)とB細胞を取り上げて
分化・成熟と機能、抗原認識の概略をシンプルに説明しています。
この動画(英語)にもとづいて日本語のメモをつくりました。
獲得免疫系のしくみ
T細胞の分化・成熟と機能
分化・成熟の流れ
リンパ球系共通前駆細胞
↓
ナイーブT細胞 (CD4+ CD8+)
TCR(T細胞受容体)で抗原を認識する
↓
成熟CD8+T細胞 または 成熟CD4T細胞 または 成熟する前に破壊
↓ ↓
細胞傷害性T細胞(CD8+) ヘルパーT細胞(CD4+)
成熟CD8+T細胞
感染した食細胞に遭遇し活性化し、
細胞傷害性T細胞(CD8+)になり感染した細胞を殺傷する。
食細胞の抗原提示は、MHCクラス1。
成熟CD4T+細胞
感染していない抗原提示細胞(マクロファージなどの食細胞)に遭遇し活性化し、
ヘルパーT細胞(CD4+)になり、他の免疫細胞を活性化、免疫応答を活性化する。
食細胞の抗原提示は、MHCクラス2。特定の抗原によってのみ活性化。
ヘルパーT細胞により活性化される細胞は、B細胞、NK細胞、マクロファージなど。
成熟T細胞になる前に破壊
ナイーブT細胞は、自己抗原を認識すると成熟T細胞になる前に破壊する。
こうして自分の身体がT細胞による攻撃を受けないしくみになっている。
B細胞の分化・成熟と機能
分化・成熟の流れ
リンパ球系共通前駆細胞
↓
ナイーブB細胞
BCR (B細胞受容体)で抗原を認識する
MHCクラス2に抗原を提示しヘルパーT細胞に伝達する。
↓ ↓
形質細胞 (plasma cell) 記憶B細胞 (memory B cell)
抗体(BCRが抗体になる)
抗体のおもな働き
・病原体の中和:抗体が病原体に結合し、病原体が細胞に結合するのを妨げる。
・オプソニン化:抗体が病原体に結合して、食細胞の貪食を容易にする。
・補体を活性化:補体とともに病原体をオプソニン化したり、溶菌に導く。
抗原を認識するしくみ
特異抗原:アミノ酸配列が異なることで多様性がある。
ナイーブB細胞
細胞膜上に発現しているBCR(抗体)で抗原を認識する。
抗体は、可変部分(V)・定常部(C)からなる。
可変部は特異性がある。
ある抗原に特異的なアミノ酸配列=エピトープ
(抗体と結合する部分の配列で、抗体が認識する部分)
ナイーブCD8+T細胞
細胞膜上にTCRをもつ。
TCRの形態は、可変部と定常部がある。基本的に抗体と同じ感じ。
感染した食細胞が病原体の抗原をMHCクラス1上に提示
↓
ナイーブCD8T細胞のTCRと結合
↓
T細胞が活性化する
ナイーブCD4+細胞
細胞膜上にTCRをもつ。
食細胞がライソゾームで破壊した病原体の抗原をMHCクラス2に提示
(病原体は溶菌・溶解している)
↓
ナイーブCD4T細胞のTCRと結合
↓
T細胞が活性化する。
.....以上が、動画のメモです。
イラストで要点を整理すると、断然わかりやすくなりますね。
動画が英語なので日本語に置き換えてみると、さらに頭に入りやすいです。
MHCクラス1、2の本来の表記は、MHCクラス I、IIですね。
ローマ数字は(このブログでは)読みづらいので、クラス1、2と表記しました。
ちょっとした補足
さて、
MHCクラス1とMHCクラス2が提示する抗原の違いは何なのか?
もう少しだけ詳しく知りたくなり調べてました。
MHCクラス1分子は
細胞質(ここでウイルスが感染し複製する)内で
生成されたペプチドを結合する。
MHCクラス2分子は
エンドソームあるいはファゴソーム(ここに病原微生物が取り込まれる)内で生成されたペプチドを結合する。[1]
まとめ
CD4T細胞 TCR 抗原提示細胞(非感染) MHCクラス2 ヘルパーT細胞
CD8T細胞 TCR 抗原提示細胞(感染) MHCクラス1 細胞傷害性T細胞
B細胞 BCR 抗原を認識できる 形質細胞(抗体)
抗原をMHCクラス2に提示・ヘルパーT細胞に伝える
今回もわかりやすい動画でした。
資料
[1] G.Gordon MacPherson, Jonathan M. Austyn, Exploring Immunology, 2012,
稲葉カヨ訳 免疫学―基礎と臨床 2014 東京化学同人