2015年9月27日

補体系の基礎(動画)


Immunology - Innate Immunity (Complement System Overview)



引き続き免疫系の動画、第3弾です。
テーマは、補体系の概論です。



補体系の主な機能と3つの経路をわかりやすく概説しています。

この動画(英語)を見ながら日本語のメモをつくりました。


  補体系の3つの主要機能


オプソニン化

補体が病原体に結合し、マクロファージなどの食作用を容易にする。
マクロファージには補体受容体があり認識できる。

膜侵襲複合体の形成 

membrane attack complex:MAC
病原体に穴をあける。水が細胞内に流入して細胞溶解(溶菌) lysis を起こし
病原体を破壊する。

情報強化


  そもそも補体系とは?

血液中に存在する30種類以上のタンパク質からなるシステム。

補体系のタンパク質は主に肝臓で産生される。

血流に乗って体内を循環している。
(非活性なので身体を攻撃しない)

循環血中で病原体と遭遇すると補体系が活性化すると
病原体のオプソニン化・膜侵襲複合体 MAC形成・情報強化(促進)などが行われる。


  補体経路(補体カスケード)

補体同士が相互に活性化し合うカスケードを形成している。
3つの経路が知られている。 各経路と重要な補体成分は以下の通り。

古典的経路

C1q、C1r、C1s、C4、C2

代替経路/ 副経路

Factor D、Factor B、プロパージン properdin、C3

レクチン経路

MBL(マンノース結合レクチン)/ フィコリンFicolin
MASP-2(MBL結合セリンプロテアーゼ-2)、C4、C2


  古典的経路

抗体依存的な経路。

抗原抗体複合体の形成

抗体に補体C1(C1q、C1r、C1s)が結合する。
(C1は、C1q、C1r、C1という3つのサブユニットで構成され三つ又の形状)
 ↓
複合体C4b2aの形成が誘導される。
C4b2aは、C3コンバーターゼ(転換酵素)、
不活性型のC3を活性型に変換する酵素。


  レクチン経路

古典的経路と似ており、C4bC2aを形成する。

レクチン経路の特徴は、補体系のタンパク質(フィコリン、MBL)が
病原体の糖鎖に結合することで始動する。

フィコリン
フィコリンが病原体の糖鎖に結合し、さらにMASP-1とMASP-2が結合する。

マンノース結合レクチン(MBL)
MBLが病原体のマンノースに結合し、さらにMASP-1とMASP-2が結合する。

MASPとは、Mnnose Associated Serine Protease、
MBP結合性セリンプロテアーゼ(用語要確認)。

フィコリンとMASPの複合体、MBLとMASPの複合体が
上述のようにして形成されると

C3コンバーターゼである複合体
C4b2aの形成が誘導される。


  代替経路/副経路

代替経路は、古典的経路やレクチン経路でC4b2aが形成されると活性化する。

C4b2aの酵素作用により
C3からC3bがつくられる(活性化される)。

C3bにB因子(Bb)、因子Dが結合する。
 ↓
C3コンバーターゼである複合体、C3bBbが形成される。

なお、因子Dとは別のタンパク質の結合によっても
C3bBbが形成される。

代替経路は、古典的経路とレクチン経路を強化し、
古典的経路とレクチン経路は、代替経路を強化する。



  C3コンバーターゼ(転換酵素)

C4b2a

C4B2aは病原体の表面にあって、主な機能はC3を活性化すること。

C3が切断されてC3aとC3bがつくられる。

代替経路で、C3bが機能する。

C3bBb

C4B2aの概略は、C4b2aと同じ。
病原体の表面にあって、C3を活性化する。
C3が切断されてC3aとC3bがつくられる。


  補体成分C3a、C3b、C5bの主な機能


C3a


C3aは、C5などの他の補体とともに働き情報を強化する。

C3a+C5aは、肥満細胞からのヒスタミン遊離を刺激する。
ヒスタミンは、血管透過性を亢進し、
白血球(好中球、マクロファージ)の動員を強化する。


C3b


C3bは、thioester bond チオエステル結合を有している。
C3bの機能は、オプソニン化を始動、膜侵襲複合体MAC形成を始動する。
C3bは、体内に多く存在する。

● C3bとオプソニン化

C3bは、細胞の表面にチオエステル結合で結合し、
マクロファージによるオプソニン化を容易にする。

マクロファージは、C3bと結合する2つの補体受容体をもっている。
・CR1(complement receptor type 1、1型補体受容体)
・C5a受容体

補体成分C5aがマクロファージのC5a受容体に結合すると

補体成分C3bがマクロファージのCR!に結合する。
 ↓
マクロファージが病原体を貪食する。

● C3bとC5a、C5bの関係

C3bは、C4b2aに結合し、C4b2a3bとなる。
C4b2a3bは、C3/C5コンバターゼ。

C4b2a3bにより、
C3からC3a+C3bがつくられ、
C5からC5a+C5bがつくられる。
 ↓
C5aは、情報強化の機能を有し、
C5bは、マクロファージのC5a受容体に結合する。

C5bの機能


C5bは、補体経路による病原体排除のターミナルステージである
膜侵襲複合体 MACの形成に関与している。
MAC形成は、他の補体成分との共同作業。
MAC形成により病原体は溶解し破壊する。


....以上がメモです。

面白いですね。

日本語の用語は、教科書というか書籍を参考にしました。

この動画のように概論のわかりやすい説明を聴くと
教科書などの関連する項目を読む気になります。

2015年9月23日

獲得免疫の基礎(動画)

Immunology - Adaptive Immune System


前回に続いて免疫系の動画、第2弾です。
テーマは、獲得免疫です。




T細胞(CD4, CD8)とB細胞を取り上げて
分化・成熟と機能、抗原認識の概略をシンプルに説明しています。

この動画(英語)にもとづいて日本語のメモをつくりました。


獲得免疫系のしくみ



  T細胞の分化・成熟と機能


分化・成熟の流れ


リンパ球系共通前駆細胞

ナイーブT細胞 (CD4+ CD8+)
 TCR(T細胞受容体)で抗原を認識する

成熟CD8+T細胞 または 成熟CD4T細胞 または 成熟する前に破壊
↓                                            ↓
細胞傷害性T細胞(CD8+)  ヘルパーT細胞(CD4+)


成熟CD8+T細胞


感染した食細胞に遭遇し活性化し、
細胞傷害性T細胞(CD8+)になり感染した細胞を殺傷する。
食細胞の抗原提示は、MHCクラス1


成熟CD4T+細胞 


感染していない抗原提示細胞(マクロファージなどの食細胞)に遭遇し活性化し、
ヘルパーT細胞(CD4+)になり、他の免疫細胞を活性化、免疫応答を活性化する。
食細胞の抗原提示は、MHCクラス2。特定の抗原によってのみ活性化。
ヘルパーT細胞により活性化される細胞は、B細胞、NK細胞、マクロファージなど。


成熟T細胞になる前に破壊


ナイーブT細胞は、自己抗原を認識すると成熟T細胞になる前に破壊する。
こうして自分の身体がT細胞による攻撃を受けないしくみになっている。



  B細胞の分化・成熟と機能

 

分化・成熟の流れ


リンパ球系共通前駆細胞

ナイーブB細胞
 BCR (B細胞受容体)で抗原を認識する
 MHCクラス2に抗原を提示しヘルパーT細胞に伝達する。
↓            ↓
形質細胞 (plasma cell)   記憶B細胞 (memory B cell)
 抗体(BCRが抗体になる)


抗体のおもな働き


・病原体の中和:抗体が病原体に結合し、病原体が細胞に結合するのを妨げる。
・オプソニン化:抗体が病原体に結合して、食細胞の貪食を容易にする。
・補体を活性化:補体とともに病原体をオプソニン化したり、溶菌に導く。



  抗原を認識するしくみ


特異抗原:アミノ酸配列が異なることで多様性がある。

ナイーブB細胞


細胞膜上に発現しているBCR(抗体)で抗原を認識する。

抗体は、可変部分(V)・定常部(C)からなる。
可変部は特異性がある。
ある抗原に特異的なアミノ酸配列=エピトープ
 (抗体と結合する部分の配列で、抗体が認識する部分)

 

ナイーブCD8+T細胞


細胞膜上にTCRをもつ。
TCRの形態は、可変部と定常部がある。基本的に抗体と同じ感じ。

感染した食細胞が病原体の抗原をMHCクラス1上に提示

ナイーブCD8T細胞のTCRと結合

T細胞が活性化する


ナイーブCD4+細胞


細胞膜上にTCRをもつ。

食細胞がライソゾームで破壊した病原体の抗原をMHCクラス2に提示
(病原体は溶菌・溶解している)

ナイーブCD4T細胞のTCRと結合

T細胞が活性化する。


.....以上が、動画のメモです。

イラストで要点を整理すると、断然わかりやすくなりますね。
動画が英語なので日本語に置き換えてみると、さらに頭に入りやすいです。
  
MHCクラス1、2の本来の表記は、MHCクラス I、IIですね。
ローマ数字は(このブログでは)読みづらいので、クラス1、2と表記しました。


  ちょっとした補足


さて、
MHCクラス1とMHCクラス2が提示する抗原の違いは何なのか?
もう少しだけ詳しく知りたくなり調べてました。

MHCクラス1分子
細胞質(ここでウイルスが感染し複製する)内で
生成されたペプチドを結合する。

MHCクラス2分子
エンドソームあるいはファゴソーム(ここに病原微生物が取り込まれる)内で生成されたペプチドを結合する。[1]


  まとめ


CD4T細胞 TCR 抗原提示細胞(非感染)  MHCクラス2  ヘルパーT細胞

CD8T細胞 TCR 抗原提示細胞(感染)   MHCクラス1  細胞傷害性T細胞

B細胞   BCR 抗原を認識できる             形質細胞(抗体)
                 抗原をMHCクラス2に提示・ヘルパーT細胞に伝える



今回もわかりやすい動画でした。


資料
[1] G.Gordon MacPherson, Jonathan M. Austyn, Exploring Immunology, 2012,
稲葉カヨ訳 免疫学―基礎と臨床 2014 東京化学同人

2015年9月20日

免疫学の基礎(動画)

Immunology Overview


免疫学の基礎を短時間でマスターできるyoutube動画を見つけました。


初学者にとって免疫学は、いろいろな“役者”(細胞やタンパク質)が登場して、相互に複雑に関係し合うので、混乱しがちですよね。この動画は、イラストを手で描きながら、超入門者が覚えておくべきポイントを紹介しています。親切でとてもわかりやすい解説です。
“役者”のキャラ(機能)とお互いの関係性をしっかり理解できると思います。

この動画を見ながら、日本語でメモをとってみました。


免疫システムとは


A. 自然免疫 Innate
:迅速に反応、第一防御、獲得免疫を始動させる
○マクロファージ
○樹状細胞 dendritic cell:DC
○肥満細胞などの顆粒球
○complementary protein = 補体 complement
○ケミカルメディエータ ex. 炎症メディエータなど

B. 獲得免疫 Adaptive
:遅い反応 、第二防御
○B細胞:抗体産生
      抗体は、病原体に結合し食細胞の貪食を容易にするなどの機能をもつ。
○T細胞:分化して→キラーT細胞、ヘルパーT細胞になる


獲得免疫とは


:B細胞とT細胞が協同して病原体を破壊
:自然免疫を介して始動する

○抗原提示:食細胞(マクロファージなど)

液性 Humoral immunity:B細胞
細胞性  Cell-mediated immunity:T細胞


免疫系のしくみ


(自然免疫)
体内の病原体をマクロファージなどの食細胞がオプソニン化→病原体破壊

(獲得免疫)
マクロファージなどの抗原提示細胞が抗原を提示
  ↓
T細胞に伝わる
  ↓
T細胞が分化する
 キラーT細胞になる→病原体破壊
 ヘルパーT細胞になる→B細胞を活性化して抗体産生を命じる→病原体破壊

記憶細胞



.....ということで、この免疫の動画は他にも続きがあるので、引き続きチェックしてみようと思います。